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先日、ある弁護士から「無償返還の届出」がされている借地権の評価について質問がありました。
権利関係としては、社長Aが土地を所有している。建物はAが代表の会社Bが所有している。Bの株式はAとその妻Cが持っている。このような状況で、AとCの離婚調停になり、Cが会社Bを清算して会社の財産を分配しろと要求してきました。(どのような法律に基づいてそのような要求ができるか法律的なことは知りませんが、、、)
そこで、弁護士から解決策として次の2ケースが考えられるので、当該借地権の評価額が知りたいと、問い合わせがありました。ケース①会社清算した場合、第三者に当該借地権を売却する。または、A本人が買い取る。ケース②会社清算せずに妻Cの株式を買い取ることで和解案を出す。
弁護士は「無償返還の届出がされている借地権は、相続税法上は評価ゼロなので、本件もゼロ評価でしょう。」と言っていました。たしかに「法令解釈通達」というものに、『借地権が設定されている土地に ついて、平成13年7月5日付課法3-57ほか11課共同「法人課税関係の申請、届出等の様式の制定について」(法令解釈通達)に定める「土地の無償返還に関する届出書」(以下「無償返還届出書」という。)が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。(平成17課資2-4 改正)』あります。
しかし、『設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、43年直資3-22通達の適用があることに留意する。この場合において、同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは「「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」と読み替えるものとする。』という条文もあり、「43年直資3-22通達」によると『課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。』とあります。
つまり、株式評価の際には、無償返還の届出をしている借地権の評価は、自用地価格の20%相当としなさいということです。なので、上記ケース②の場合には自用地価格の20%相当額を評価額としたほうが良いでしょう。
では、ケース①の場合はというと、借地権価格ゼロとすると、使用貸借で土地を借りている場合と変わらなくなってしまいます。使用貸借では地主から建物取り壊して土地を返してくれと言われたら対抗するすべがありません。一方、無償返還の届出がされている場合であっても借地権であるため、借地契約期間中は土地を利用する権利がありますし、契約更新も可能です。なので、無償返還の届出がされている借地であっても、一定の評価額は発生すると思われます。評価額がいくらになるかは正式な鑑定評価が必要です。
と、弁護士には回答しました。
ここで、弁護士と話をして一つ疑問が生じました。そもそも無償返還の届出がされている借地権は第三者が買ってくれるのか?借地借家法では借地人に不利な特約は無効とされるが、第三者に売却する際に、借地契約上の「無償返還する」という条文は借地人に不利な特約ではないのか?など。
これについては今後の検討課題としたいと思います。
以上
不動産鑑定士 大関 行隆